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U魂 -Dynamite!!2008- - 闘議(とうぎ) - 格信犯ウェブ

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闘議(とうぎ)

U魂 -Dynamite!!2008-

u-spirit
2009.01.15
 青木の激勝後、暗転してサンダーバードのテーマと共にエンドロールが流れる。
”お祭はここまで”
これから執り行われる最後の試合は、格闘技ではなく決闘だ。心の準備はできているか?と言い聞かせる様に

Are You Ready
For The Match?

 ”U”の哀歌とも挽歌とも言える煽りVTRが流れ始める。映し出された田村は言葉を搾り出す度に顔を歪めている。映し出された桜庭は蔑んだ目で表情が強張っている。人の心底に潜む虚しさと疎ましさを剥き出しに晒す2人僕らが見守ってきた夢の舞台裏を穿る心地悪い内容に悔しくて涙が込み上げてくる。

 何故、今更そんな事を言うんだ。そんな小さな事にいつまで、拘っているんだ。

 あまりに残酷で物悲しい映像に僕は天を仰いだ。一定の理解を示そうとする田村に対して、その歩みや存在さえも完全に否定する桜庭はプロレスラーとして、あるまじき発言まで口にする。

「3回目はプロレスです」

 何のためだ?誰のためだ?「記録はプロレスとしての勝敗だ!僕は負けていない!」と言いたげに田村潔司を怨むあまりに、存在を認めたくないあまりに、UWFさえも、自分の歩んできた道さえも、そして当時のファンさえも否定すると言うのか?後になって訂正するのは、当時から僕らが忌み嫌ってきた大人たちがしていた事。この期に及んで後付けの説明など誰も欲していない。

 そして、桜庭の朋友である下柳は”U”の象徴であるレガースを付けて影武者として入場する。僕から見ればその全てが冒涜に感じた。阪神の帽子を粗雑に振り回しながら格闘家が始球式をしたら、阪神ファンと下柳本人はどう感じるだろう。想像力に欠ける思い遣りのない行動には呆れた。後から本気でレガースを着用して入場してきた田村と比較して、どちらに夢を見れたのかは言うまでもない。そして、禁断のゴング、無念さと多くの何故?が込み上げる。

何故、プロレスラーなのにプロレスを蔑むのだ。
何故、レガースを着けるフリをしたんだ。
何故、レガースを着けて試合をしたんだ。
何故、田村が桜庭の顔面を殴っているんだ。
何故、桜庭は打開の策ひとつ出せないんだ。
何故、決着がつかない試合をしたんだ。
何故、闘ってしまったんだ。

 ゴツゴツと田村の拳骨が桜庭の頭蓋骨にぶつかり場内に鈍く響き渡る。不似合いな田村の鉄槌が振り下ろされる度にUを追い駆けたあの頃が消えていく気がした。田村に対して不満をブチ撒け続けた桜庭は、口だけの男なんかではない。もっと、動けた。もっと、出来た。なのに、大嫌いな先輩に顔面を素手で殴ってやりたいとまで言い放った田村に、ただ殴られていた桜庭は試合後、大して悔しがりもせずに、おどけた笑顔で「もう一回お願いします」と田村に語った。

「プロレスラーは本当は強いんです!」

 声を大にして代弁してくれたあの日から、桜庭和志は我々のヒーローとなった。あんなに大きかった桜庭和志という男が今はこんなに小さく見える。

「真剣勝負で実績もないのに」

 そうかもしれない。そうだったかもしれない。ベクトルが少し違っただけじゃないか。桜庭よ、それによって何を失ったかまだ、気付いてないのか。あの当時を批判するなら、問うてみたい。会社が潰れそうな時、手を貸さなかった裏切り者?じゃあ、その会社は今、どうなったんだ!そして、師従した高田延彦との現在の関係はどうなんだ!外野から同じ様に陰口叩いている奴らに今、どこのリングからオファーがあると言うんだ!勇気なく、恐れをなし、俯いてただ、先輩にしがみ付いて不動であった者ばかりが口を開いて喚いている。憂き目を見れない不徳な自分を省みず、因果として八つ当たり気味に田村潔司の名を出すな。

 悪趣味だ。こんな夢の欠片も無い試合など二度目は不要だ。プロレスラーとしての鉄則は、けしてファンに醜態を晒さない。生き様ではなく無様な姿を晒すなら、あの頃、僕らが否定した”大人たち”と一緒じゃないか。夢を魅せてくれるから、プロレスラーが、UWFが好きだったんだ。日本人の武蔵にブーイングまでして、KOされると飛び上がって喜んでいた刺激要求集団は罪を感じず桜庭和志に吐き捨てるだろう。

「もう、終わった」

 格闘技は殺し合い?格闘技はなんでもあり?
それなら、繁栄しなくていい。誰かに踊らされ犠牲を見ながら盛り上がる間抜けな心無い人間に僕はなりたくない。これまでと同じく、田村潔司の背中の夕陽だけを追いかけて行こう。
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