ユズリハという木をご存じですか?
通常、木は古い葉をすべて落としてから新しい葉を伸ばします。しかしユズリハは、新しい葉が伸びてから古い葉が落ちます。このことから場所を譲るように入れ替わるという意味で「譲葉」と名付けられました。
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総合格闘技向上委員会ver.0.1 ユズリハ ~000526_船木×ヒクソン~ |
marc_nas 2004.07.16 |
今回アップする予定だったコラムが届かなかったので、代わりに格信犯創刊号発刊の際に執筆したコラムをかわりに掲載いたします。このコラムは2000年5月26日のコロシアム2000の船木×ヒクソンを見て執筆したものです。当時好評だったので、そのままの状態でお見せしようと思ったのですが、今読み返すと余りにも読み辛かったので加筆・修正したものを掲載します。
2000年5月26日。この日、近藤はヒクソンの再来と呼ばれる弟子ヒベイロ相手に衝撃的な勝利を飾った。同じ日、船木はヒクソンにチョークを極められタップすることなく白目をむき衝撃的な敗北を喫し、そして引退した。
近藤という新しい葉と、船木という古い葉はパンクラスという太い幹で少しだけ生を重ね、そしてすれ違った。古い葉は新しい葉に「素晴らしい技術」と「何にも屈せざる心」という養分をすべて譲り渡した。そして古い葉は、大輪の花を咲かせることなく、激しく散華した。その散り様は、大輪の花を咲かせたどのそれより見事であった。近藤よ、船木から譲り受けた技術と心で総合格闘技界で大きな花を咲かせてくれ。
<参考資料>
2000.05.26 コロシアム2000@東京ドーム 観衆:40420人(主催者発表)
2000.05.26 コロシアム2000@東京ドーム 観衆:40420人(主催者発表)
<メインイベント> コロシアム特別ルール 15分無制限ラウンド
●船木誠勝(パンクラス)
○ヒクソン・グレイシー(ヒクソン・グレイシー柔術センター)
1R 11'46" チョークスリーパー
●船木誠勝(パンクラス)
○ヒクソン・グレイシー(ヒクソン・グレイシー柔術センター)
1R 11'46" チョークスリーパー
序盤はコーナでの組み合いで時間が刻々と経過する。10分過ぎヒクソンが組みつきテイクダウンしサイドポジションを奪う。そこからマウントに移行しパウンド。合計27発のパンチを受け船木は出血。バックマウントからチョークスリーパで20秒以上、船木の首を絞め続け、落とした。試合後、船木は花道で突然立ち止まり観客に一礼した。そして試合後の会見で引退を表明した。
<第1試合> コロシアムルール 15分1R(判定なし)
○近藤有己(パンクラス)
●サウロ・ヒベイロ(グレイシー・ウマイタ)
1R 0'22" KO:パウンドによるレフェリーストップ
○近藤有己(パンクラス)
●サウロ・ヒベイロ(グレイシー・ウマイタ)
1R 0'22" KO:パウンドによるレフェリーストップ
開始早々近藤は得意の上段回し蹴りでヒベイロの体制を崩し、そのまま抱え込んでヒザ蹴りを顔面に放つ。倒れたヒベイロにパウンドをヒットさせ続け血祭りにあげた。
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総合格闘技向上委員会ver.7.0 はっぴぃえんどの法則 ~040620_桜庭×シェンブリ~ |
marc_nas 2004.07.09 |
今回UPするコラムがなかったので、PRIDE GP 2004 2nd Round前に執筆したもののお蔵入りする予定だった僕のコラムを掲載することになりました。掲載するにはクオリティが低く、内容も大会前のものすが、よろしければご一読下さい。
PRIDEにはかつてはっぴぃえんどの法則というのがあった。それはメインでの桜庭和志の勝利。これがPRIDEの人気の秘訣でもあり、幸せな結末を来場した誰もが目にし、笑顔で会場を後にできるという法則であった。しかしその法則はもろくも崩れ去っていった。
過去のPRIDE全大会中、桜庭は実に9大会でメインを務めあげている。もちろんこれは他のどの選手より多い。PRIDE.13でのヴァンダレイ・シウバ戦の敗北を機にはっぴぃえんどの法則は崩れ始め、それでもDSE(PRIDE運営会社)とファンは桜庭を信じメインに据え勝利を懇願した。ところがその「春よこい、桜よ咲け」との期待とは裏腹に敗北が続き、サッドエンドの法則となってしまったのだ。メインで桜庭が敗北し鬱な気分のまま会場を後にするという法則に成り代わってしまったのだ。
今回のPRIDE GP 2004 2nd Roundでは桜庭はオープニングマッチ(第一試合)に抜擢された。ハッピーエンドの法則は消え去ったのかも知れない。しかしファンの向かい風をあつめて、今大会より桜庭は新たな法則ハッピースタートの法則を築き上げてくれると信じたい。
<加筆分>
桜庭にとっても仕切り直しのリスタートを切らねばならなかったが、結果、ハッピースタートの法則と呼ぶには物足りない試合内容となってしまった。しかしまた次回こそはと期待してしまうのである。
桜庭にとっても仕切り直しのリスタートを切らねばならなかったが、結果、ハッピースタートの法則と呼ぶには物足りない試合内容となってしまった。しかしまた次回こそはと期待してしまうのである。
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総合格闘技向上委員会ver.6.0 ハッスル宣伝のためのPRIDE勝利 ~040425_小川×レコ~ |
marc_nas 2004.05.07 |
なんだか毎週書いてる感のある"尖ったナイフ" a.k.a. marc_nasですが、今回も独自の視点で総合格闘技界を一刀両断し、見えない側面を切り取ってみなさんにお届けしていきます。今回は泥仕合の様相を呈してきたPRIDEとK-1の選手の引き抜き問題について書こうと思ってました。が、先程フジテレビで放送されたPRIDEGP2004開幕戦が14.8%の高視聴率を獲得し、見られた方もたくさんいると思いますのでmarc_nas的にPRIDEGPを統括、もとい、総括させて頂きます。
まず、予定調和のミルコ・クロコップ×ケビン・ランデルマン戦について。過去のDialogueでも触れた通り、戦前からミルコ最強説に危惧の念を抱いていた。ランデルマン級の一流レスラーのタックルは切れないと。そして上になられてインサイドガードからパスせずパウンドをうけた時が敗れる時だと思っていたが、その通りになった。一点予想外だったのはテイクダウンがタックルではなく打撃だったこと。一見、猪突猛進型のランデルマンの大振りラッキーパンチが不用意なミルコに当たったように思える。
しかし実はそれは違う。この試合は決してフロックではなく予定調和なのだ。ミルコの左ハイキックを警戒し、右のガードを下げず、自分のパンチの距離を保つために恐れずに前に詰めていったランデルマンの勇気の作戦勝ちなのだ。その結果、カウンターの左フックがクリーンヒットした。これはランデルマンが試合後に語ったことなので、結果論であり理由の後付けかもしれない。もう一度戦ったとしても同じ結果がでるとは限らないし、もちろんK-1ルールで両者が戦ったとしたらミルコは勝利するだろう。しかしこれがPRIDEGPであり、ミルコはまだまだ総合格闘技の選手としては不完全でありトップ3と呼ぶには程遠いと考える。
そして、予定外調和ともいうべきか不測の事態、小川直也×ステファン・レコ戦について。PRIDEのリングから離れて3年半、36歳になった小川の勝利など期待はするも予想などできなかった。伊原ジムで打撃を学び自信をつけた小川が前回の佐竹戦、前々回グッドリッジ戦同様、打ち合いを挑みKOされるだろうと考えていた。以前はそれでKOされなかったが、今回の相手は世界のK-1トップファイターレコである。
が、それは杞憂にすぎなかった。総合格闘技での打撃の技術は小川の方が上だった。そして左フックでダウンをとりグラウンドの攻防になるとレコは小川の敵ではなかった。完全勝利の後、マイクパフォーマンスで「PRIDEもいいが自分はあくまでハッスルの宣伝のためにやってきたんです!」と言ってのけた。会場のPRIDEファンは嘲笑していたし、僕自身も笑ったが、プロレスファンにとってはなんと気持ちいい言葉だろうか。勝利したからこそ言えるセリフである。どこか予備校のコピーで「学歴なんて関係ない。東大出てから言ってみたい」というのがあったが、それに通ずるかっこよさがこの日の小川にはあった。
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総合格闘技向上委員会ver.5.0 プロレスラーという誇りを胸に ~040425_横井×ノゲイラ~ |
marc_nas 2004.04.23 |
今回ver.5.0にして早くも何を書いていいのやら思い浮かびません。なので今週日曜日2004.04.25に開催されるPRIDEGPに出場する横井選手について少し触れたいと思います。
まず彼の略歴を。横井宏孝。1978.06.08生まれの25歳。世界のTKこと高阪剛率いるチームアライアンス所属。学生時代に培った柔道をベースにアマチュア修斗で3勝、プロ修斗でも1勝。その後リングス入団し4ヶ月の史上最速デビュウ。連勝街道を走り続けるもリングスが解散し、プロレス団体ZERO-ONEに主戦場を移す。佐藤耕平とROWDYを結成し現在に至る。PRIDE、DEEP、リングス、修斗含め未だ総合格闘技13勝無敗。
こうして見るとプロレスラーにしておくのはもったいないくらいの実績である。ただフリーである彼がメシを食っていくには定期的に参戦できるプロレスの方が魅力的だったのか。僕としては、名のあるギャラの高い選手をあげるなら、この若い才能溢れる青年にもっともっと総合格闘技のリングにあがるチャンスを与えて欲しい。それだけのコストパフォーマンス(魅力+実力)を持った選手であると思うのだ。
横井を見る度、僕の中にひとつ思い出がよぎる。それは2002.10.26に大阪臨海センターで行われたZERO-ONEの試合後のこと。坂田亘とタッグを組みザ・プレデター、ジミー・スヌーカーJr.組と対戦し、横井は善戦するもプレデターに攻め込まれピンフォール負け。リングス時代の横井しか知らなかった僕は正直ショックを受けた。試合後、話しかけるチャンスがあったので「リングス時代からファンです。今日負けちゃって残念です。」と言うと「まぁ、プロレスっすから。」と言い放ったのだ。そして「総合の方で期待してください。今度、実はでっかい大会に出る予定があるんで。」と続けた。ざっくばらんというか、器がデカイというのか。更に彼を好きになった。ちなみに、その一週間後にPRIDE参戦を表明しPRIDE.23でジェレル・ベネチアンにアームバーで一本勝ち。
そんな横井が今回PRIDEヘビー級GPに出場するというのだ。対戦相手は言わずと知れた世界最強柔術家アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ。横井不利は明々白々だが、僕は横井の勝利に期待する。そして勝利者インタビュウでこう答えて欲しい。「まぁ、総合っすから。」と。
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総合格闘技向上委員会ver.4.0 A級戦犯角田信朗 ~040327_武蔵×曙~ |
marc_nas 2004.04.09 |
今回で早くも四回目の総合格闘技向上委員会。前回までは昔の大会から向上を訴えてきましたが、今回は2004.03.27に開催されたK-1 WORLD GPの曙×武蔵に思うところがありましたので、時事ネタで攻めようと思います。
今回のK-1(CX系)はマッチメイク・試合内容・演出と、どれも前回の2004.03.14のK-1 BEAST(日テレ系)とは比べものにならないほどおもしろかった。まず一つ言いたいのが「フジテレビ最高!」と。試合の見せ方、導入部分の感情移入の方法ともに満点であった。日本テレビも少しは見習って欲しいものだ。ただ一つ、0点がの箇所があった。それは角田信朗レフェリーだ。
記憶に新しい2003.12.06のK-1 WORLD GP 2003 開幕戦でのボブ・サップ×レミー・ボヤンスキー戦、シリル・アビディ×フランソワ・ボタ戦。この試合はともに倒れた相手選手にパンチしての反則裁定。今回の曙×武蔵戦でも同様の事件が起こった。武蔵がダウン気味に倒れたところに角田レフェリーの制止を振り切り曙が暴挙にしか見えないパンチの乱打。曙の野蛮性ばかりが目立ってしまったが、実は一番の戦犯は曙ではない。武蔵でもない。角田レフェリーだと邪推する。
その判決理由のひとつは反則裁定の曖昧さであり統一性がないこと。前回、ボタには即反則負けを言い渡し、同様の反則を犯したサップにはスター的特例なのか一旦相手の回復を待つという裁定。今回に至ってはドクターストップがかかってるにも関わらず試合続行という、スポーツにはあるまじき対観客、対視聴者優先の裁定。
そしてもうひとつの判決理由としては試合の裁き方である。総合格闘技のレフェリングは倒れた選手を相手選手から体を呈して守り、抱きかかえるようにストップする。それに対し、角田含めK-1レフェリーは選手間に割ってはいるだけのストップである。通常のK-1の試合を裁くにはこれでいいのかもしれない。しかしボタ(元ボクシング)、サップ(元NHL、現総合格闘家)、曙(元相撲取り)ともにK-1ルールに慣れていない突貫型の選手達である。総合格闘技の裁き方のように選手の安全面を考慮し無理矢理にでも試合をストップしなければならない状況が起こりうるのは容易に想像できたことである。
今回は最初の事件ではない。また前回と同じ轍を踏んだ。不完全燃焼の選手達・消化不良の観客達・スポーツ競技としての品質を考えると、反則裁定基準の明瞭化と試合の裁き方、両面での検討見直しが必要だと考えられる。K-1もこれから総合格闘技も展開していくとのことなので、これは総合格闘技向上委員会としてなおさら見逃すことの出来ない大きな問題である。