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総合格闘技向上委員会ver.22.0 世間に晒した失態 ~061231_秋山×桜庭~ |
marc_nas 2007.01.05 |
今年は数年ぶりに会場ではなく、TVでの観戦となったK-1 Dynamite!!。須藤元気選手の引退、曙選手、ホンマン×ボビー戦など話題はは山ほどありますが、今も世論を真っ二つに分ける秋山成勲×桜庭和志戦についての、僕なりの見解を。
最初に言わせてください。僕は桜庭選手がやっぱり大好きです。また秋山選手も世界柔道を、彼目当てに観に行ったほど好きです。また梅木レフェリーにも絶対の信頼を置いています。ですから、なるべくフラットな立場で、分析したいと思います。
試合中に何度も"滑る"とアピールする桜庭選手。前回同様、危険な状態なのに、一向にストップされない試合。後味の悪い、試合後の"何かを塗っていたのではないか"との疑惑。
もし、桜庭選手でなく無名の外国人選手だとしたら、こんなに同情があったのか、否。
もし、桜庭選手ではく無名の外国人選手だとしたら、あんなにストップが遅かったのか、否。
秋山選手、桜庭選手、梅木レフェリーのそれぞれの立場になって、諸悪の根元と、なぜこうなってしまったのかを考えてみる。
もし、桜庭選手でなく無名の外国人選手だとしたら、こんなに同情があったのか、否。
もし、桜庭選手ではく無名の外国人選手だとしたら、あんなにストップが遅かったのか、否。
秋山選手、桜庭選手、梅木レフェリーのそれぞれの立場になって、諸悪の根元と、なぜこうなってしまったのかを考えてみる。
もし、自分が秋山選手だった場合を想定してみる。間違いなく、グラウンド状態で殴る手は止められなかった。ただ、桜庭選手のアピール直後に、一旦ストップが入らないように焦って殴っているようにも見える。もし、オイルを塗っていなかったとしたら、試合後の疑惑について、会見で憤慨してしまうだろう。もし、塗っていたとしても"スタンドの攻防でのことじゃないか"と言い訳をしてしまうだろう。しかし、翌日の秋山選手は会見では比較的ジェントルな対応を取っていた。一方的勝利と、会見での対応は評価したい。
しかし、忘れてはならないのは彼にはいくつか前科がある。くまさんのブログを読むと、限りなくクロに近いのではないかと思ってしまう。
もし、自分が桜庭選手だった場合を想定してみる。同様に試合中に必死にアピールをしただろう。しかし、以前の桜庭選手ならガードポジションなり、ちゃんと防御し体制を整えてから、ストップの要求をしたのではないかとも考えてしまう。そして、自分なら会見を開き、再戦を求める。未だ、精密検査中なのか、会見は開かれていない。
また、その前科を桜庭選手が事前に知っていたのかどうか、前回同様、レフェリーに疑心暗鬼が生じていたのではないかとも考えてしまう。
もし、自分が梅木レフェリーだった場合を想定してみる。まず単純に、止めるのが遅すぎた。最後のパウンド状態の際も、心配そうに廻りを見渡しているようで、ストップよりゴングの方が早かった。スタンドでの攻防の際に、桜庭選手がタイムのサインを出した際に、解説席の宇野選手も"目に指が入ったんですかね"と異常に気付いたのに、「アクション」と繰り返した。あの時に、一旦チェックするべだった。また、試合後のチェックももっと入念にすべきだった。梅木レフェリーも年末の大一番を任され、いつもの冷静沈着な彼ではなかったのか。度重なるレフェリング問題で、最後の砦となった梅木レフェリーも慎重になりすぎたのか。
ここまででは、梅木:×、桜庭:△、秋山:○となりそうだが、他にも起因するところはある。まず、試合前、試合後のチェックの甘さ。こうなってしまったのなら、桜庭・秋山両選手の試合当日のグローブ・パンツなどを回収してでも徹底的に再検査すべき。また、違反があった場合は、然るべき罰則を与えるべき。更に言うなら、修斗や相撲のような中立的なコミッションを設立すべき。そして、キッチリ再戦を行うべき。
それと、どうしても我々ファンが引っかかるところは、秋山選手の前科。穿った目で見てしまってはいるが、それは人間心理として致し方ない。しかし、皆さんにはもっとフラットな視線で見て頂きたい。それは、桜庭選手に対しても。桜庭選手には以前からどうしても同情票が多い。私もその一人であるのだが。しかし、冷静に考えると桜庭選手の一方的な発言ともとれるということである。その発言を鵜呑みにして、断罪してはならないということ。
やはり、FEG側には状況証拠を揃えた上で検証して頂きたい。年末の大一番は格闘技が最も世間に触れる一日。しかし、その後の情報というのは、コアなファンのみがネットや紙面で目にすることしかできない。あの試合映像しか観ていない人達が、格闘技に対してどう思うのか。それが格闘技にとっていいことなのか。検証か再戦なくして、格闘技に対しての悪印象の払拭はあり得ない。
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総合格闘技向上委員会ver.21.0 最強を夢見た少年はいつしか ~060930_K-1@大阪~ |
marc_nas 2006.10.06 |
2006年9月30日、K-1 WORLD GP@大阪城ホール。毎年大阪ドームで開催されるGP開幕戦は、今年、少しグレードダウンし大阪城ホールでの開催となった。空席の目立つ場内でイマイチ盛り上がらない観客を、一気にヒートアップさせたのはメインの誰の目から見てもジェロム・レ・バンナ vs. チェ・ホンマンだった。私自身もかなり熱くなったのだが、その数試合前のレミー・ボンヤスキー vs. ゲーリー・グッドリッジ、普通の人はスルーしてしまうようなこの試合に、私は最も熱くなり、こみ上げる感情を抑えきれなかったのだ。
少年の頃、男の子なら誰しも一度は"最強"を夢見たはず。そして、大抵の場合、自分よりも圧倒的に強い人間に出逢い、そしてその最強への夢を挫折する。それでも諦めなかった者、また自身が圧倒的に強かった者のみがプロファイターとなる。グッドリッジもまた、夢を諦めず、圧倒的に強かった側の人間のはず。
UFCでトーナメント準優勝など、ある程度の活躍を見せ、PRIDE.1から参戦。その後、勝ち負けを繰り返すうち、いつの間にか初参戦の選手の力試し的な役割を担う「PRIDEの番人」と呼ばれるようになったグッドリッジ。小川直也の初参戦の相手を務めたり、ギルバート・アイブルにハイキックで衝撃的KOをされたり、ある時は猪木軍として担ぎ出されたり。最強を追い求めたはずの少年は、敗北を重ね、圧倒的な力の差を見せつけられるうち、いつしかプロモーターが求める自分の立ち位置を理解していったのだろう。しかし、そこにある種の悲壮感はなかった。
1999年のPRIDE.8。グッドリッジは第5試合でトム・エリクソンに敗れた。そしてその日のメインで、桜庭がホイラー・グレイシーに勝利し、観客やセコンド陣は初のグレイシーからの歴史的勝利に歓喜し、嗚咽した。そして、桜庭はリング中央で肩車されていた。肩車をしていた主はセコンドの誰でもなく、グッドリッジ。彼は数試合前に敗北したことを微塵も感じさせず、日本人ファイターのグレイシー狩りの喜びを分かち合ったのだ。本意はただの目立ちたがり屋で、サービス精神旺盛な人間だったのかも知れない。しかし、その光景に私は好感を得ずには、いられなかった。
そののち、敗れたエリクソンに教えを請い、セコンドに付いたり付かれたりの盟友となっていた。彼のセコンドには私が覚えている限り、マーク・コールマン、ジョシュ・バーネット、マイケル・マクドナルドと、幅広く輪を広げていった。二度の対戦をしたバンナもまた、ローキックでKO勝利したのち、歩けなくなった対戦相手の彼をおぶって控え室まで運んでいったのだった。(→ver.17.0 リング外で見た友情)こういった姿からも窺えるように、彼は誰からも愛されるキャラクターなのだろう。
そして彼は2003年の大晦日のドン・フライ戦を最後に、一度は選手を引退することとなる。その後のK-1で復帰することとなった際には、色々と揶揄されることもあったが、やはり私はファイターとして彼を応援し続けた。一度は消えかけた最強への夢がまた違うステージで再燃したのかと思いきや、K-1では更に観客が喜ぶKOするかされるかの、突貫ファイトを展開し、PRIDEの頃にも増してファイトスタイルは色濃く、愛されるものとなっていった。
前置きが長くなったが、今大会、彼は開幕戦にはエントリーされていなかったのだが、直前のピーター・アーツの病欠により代打出場することとなった。会見での記者の「なぜ毎回、直前のオファーを断らないのか?」の問いに「僕はどんな時でもオファーに応えられるよう準備している。衰えも感じないし、ゴウリキ・パワーを信じている。与えられた課題には、全てベストを尽くしてやり遂げたいと思っている。対戦相手が誰だろうが、会場がどこであろうが、オファーが来たら僕は迷わず"イエス"と答える。もちろん、技術うんぬんで言えば僕はベストファイターではないかもしれない。でも、自分のパフォーマンスでファンが喜んでくれると信じているし、自分自身のことも信じている。選手によっては敗北への恐怖心で、試合数が減ってリングから遠ざかったりする選手もいるが、僕はそういう考えではない。勝てる可能性が少しでもあればプロである以上、最後までKOを狙って行くべきだし、それで逆転されても、お客さんが喜んでくれるならそれでいい。(中略)ピーターには感謝してるし、一日も早く良くなって欲しい」と答えたのだ。
PRIDEからK-1へ鞍替えした際にも、今回のような急なオファーを毎回受ける度にも、"金のためだ"という人もいるが、私はグッドリッジの会見での言葉を信じたい。また、その格闘哲学は"最強への道・常勝街道"という点に於いては、正解ではないのかも知れない。十二分な準備があってこその、十分な結果なのだとも思うけれど、そんな選手が増える中、彼の現代格闘技へのアンチテーゼのような哲学には、激しく共感出来るし、男らしささえ感じる。
しかし、いややはりと言うべきか、リングに上がった彼の腹はたるんでおり、準備不足の感は否めず、レミーの妙技オンパレードが如く、左右のハイキック、華麗な飛び膝を喰らうこととなる。1Rに見事な右飛び膝でダウンを喫するも、完全に目の焦点があっていない状態で立ち上がり、観ているこちら側が辛くなるような状態でも闘い続けた。なんとか耐えて迎えた2Rも、レミーの華麗な蹴り技は続き、意識朦朧としている中、レミーの脚を抱え、パンチを繰り出す。そして、最終Rも右膝→パンチのラッシュ→右ハイキックで左目周辺をカットし、おびただしい量の出血をし、マットに沈められることとなった。
試合後のインタビューで、途中から意識がない状態でのファイトで、記憶がないことを明かした。そして、記者が「急なオファーのためコンディション面で大変だったのでは?」との問いに対して「1年中、コンディションを整えるよう努めている。だから問題はなかったが、よりコンディションを高めるという意味では厳しかった」とやっと漏らした。だが、それは決して言い訳には聞こえず、あくまで勝利を狙い、戦略を立てて闘ったことを強調した。
現代格闘技界に於いて、時代錯誤ともとれる彼の格闘哲学とファイトスタイル。だけど、常勝主義のこのご時世に、こんな天然記念物のような男がいてもいいじゃない。間違った男らしさかも知れないけど、素直にめちゃくちゃかっこいいと思うのです。私はそんなグッドリッジが大好きでならないのです。ただ、頭部への攻撃に相当弱くなっていることから、かなりダメージが蓄積しているのが窺えるのが心配でなりません。あと何年続くか分からない現役生活だけれども、無理はせず・・・と言っても、無理をしてしまうのが、彼なんだろうなぁ、またそんなところがまた私の心をくするぐるのだろうなぁ。そんな彼に幸あれ、グッドラック、グッドリッジ。
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総合格闘技向上委員会ver.20.0 初めて観た亀田興毅 ~060802_亀田×ランダエタ~ |
marc_nas 2006.08.03 |
私は今日初めて、亀田興毅選手の試合をテレビで観戦しました。今まで弟:大毅選手も含め、一度も観たことがなかったのです。もちろん、紙面やネット、ワイドショウなどでは何度も目にしていますが、我々のサイトでは一度も取り上げたことはありませんでした。試合前、試合後になどによく行うパフォーマンスはいつも興味深く観ていましたが、試合を観ようと思ったことは一度もなかったのです。理由は、端的に言うと"試合を観たいと思うほど興味をそそられなかった"というところでしょうか。ただ、世界タイトル戦ともなれば観なければと思い、この度、重い腰を上げたのです。
グレイシー・トレインを思わせる家族並んでの入場シーン。TBSのお家芸とも言える(HERO'S、K-1MAXなどでも同様)アナウンサーの家族愛を強調する前フリ。興毅選手たっての希望であるというT-BOLANの人の国歌斉唱。対戦相手へのメンチ切り。どれもなんだか安いドラマを観ているようで、滑稽で稚拙。サムライ
TVの「キックの星」という番組の中で我龍真吾選手一家が見せる家族愛、ヤンキー魂とはまるで別物だった。
そして、試合は始まり、1R終了間際に興毅選手がKOされた直後、ビックリするようなシーンが。おぼつかない足取りで、うつろな表情のままセコンドに戻る興毅選手。その興毅選手に対して、いつも喝なのかビンタを張る父:史郎氏。テンプルが揺れて間もない選手の頬を張るなんて、トレーナーとしては信じがたい行為だった。これもまたテレビを意識した父のパフォーマンスなのだろうか、そうだとしてもとても出来の良いトレーナーだとは思えない。
その後の展開はご存じの通り、疑惑の判定となった。ホーム・アドヴァンテージというか、ホームタウン・ディシジョンというか、かなり微妙な判定だったが、この点については目を瞑りたい。他国開催であれば、間違いなく歓喜と落胆の表情は逆だっただろう。
最後に私の言いたいことは二つ。
一つは「屈折した光 ~041014_武士道5~」のリスペクトの項でも述べたが、相手へのリスペクトの心を持てと。プロである限り、試合前のパフォーマンスで観客の観戦欲・ワクワク感を煽ることは然るべきこと。ただ、減量に苦しむ相手の前で骨付き肉をむさぼり食うのはいかがなものかと。また、毎度のように"試合後"に相手陣営につっかかる父の姿。それらには、不快感を憶えた人も少なくないはず。スポーツマンシップとリスペクトに欠けている気がしてならない。
それともう一つは、更なる高みを目指すなら親離れをすべきと。よく目にする父が考案した独自の練習法と独自の減量法。更に、常に「前や!気合いや!」とのスポ根漫画のごときセコンドの声。協栄ジムに移籍したことで、父との離別が見られるだろうかと思っていたが、やはり変わることはなかった。彼ら兄弟の天賦の才能は日本ボクシング界の宝である。それは曲がりなりにも世界王者まで上り詰めたのだから、誰もが認めざるをえない事実。更なる高みを目指すなら、科学的トレーニングと的確なセコンドのアドバイスが必要だと思う。
最後に、TBSへ。恐らく試合後、この判定が様々な論争を呼ぶことだろう。ひょっとすると、ヒートアップしすぎた亀田人気が一気にクールダウンするかも知れない。だが、ドル箱スターへと育て上げ、客寄せパンダとなってしまった稀有の才能を、これからも切り捨てることなく、正当に評価し、どんなことが起ころうとも最後まで面倒を見てあげて欲しい。そう切に願う。
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総合格闘技向上委員会ver.19.0 TV放送では観られない観戦記 ~051231_Dynamite!!~ |
marc_nas 2006.01.14 |
2005年12月31日に大阪ドームにて開催された"K-1 PREMIUM 2005 Dynamite!!"を取材してきました。過去最高の長文ですが、テレビ放送では観ることの出来なかった試合のレポートなど書いています。是非、ご一読ください。stand様にも、同様のコラムを掲載させて頂いております。
よくPRIDEとK-1を比較する人がいるが、成り立ちも競技性も違うのだから、二つのみを比較対象として見ることは間違っている。しかし、こと大晦日の男祭りとDyanamite!!となれば、話は別である。同日開催であり、放送時間も重なるのだから、観客動員はもちろん、テレビ視聴率、マッチメイク、試合の見せ方など比較してみると面白い。そして、お互いにとってもぶつかり合うことで、意識し、競い合い、相乗効果を生むことになるはずである。一昔前までは選手のブッキングなど、双方がイメージダウンに繋がるマイナス効果を生み出してはいたけれど。
音楽で例えると、谷川政権に変わってからのK-1はDynamite!!も含め、ヒットチャートを賑わすソフトを多く抱える大手レーベルに似ている。年末には、レーベル所属のヒップホップからJ-POPアーティストまで、様々な客層をターゲットとしたオールジャンルのコンピレーションアルバムが発表されるのである。そのオールジャンルはのアルバムは、ジャンルを問わないが故に、時にコンセプトを失ったおもちゃ箱的な危険も孕んでしまう。
一方、PRIDEはというと、テクノならテクノのワンジャンルに絞り、世界中から名だたるアーティストを集め、敏腕プロデューサーがレーベルの色をアーティスト達に吹き込む。その結果、テクノ界のコアなファンから、J-POPが好きだった人もテクノへのイントロダクションとして楽しむなど、それぞれを魅了し、一つのジャンルを確立した。年末発表のアルバムに限っては、同日発売の対抗馬の存在も意識しつつ、無党派層も取り込もうと、レーベル批判へと繋がるかも知れぬ爆弾アーティスト(金子賢)の参加も試みた。
まるで、大晦日の「NHK紅白歌合戦」と、テレビ東京の「年忘れにっぽんの歌」のように語ってしまったが、すなわち、Dynamite!!と男祭りはそれぞれ違ったカラーを打ちだし、大晦日にお茶の間にてザッピングされたのだ。私達がお茶の間ではなく大阪ドームにて体感してきたDynamite!!のレポートをここに。
会場に入る際に渡されたパンフレットには、一枚刷りの紙が挟まれていた。そこには、男祭りと牽制し合い当日発表となった試合順が書かれた。豪華面子の大トリに据えられたのは、TV放送と同じく須藤元気 vs. 山本“KID”徳郁戦。清原和博選手の開幕宣言で一気に爆発した大阪ドームに、K-1のお家芸である炎の演出により会場のヴォルテージは一気に加速する。開会宣言後の全選手紹介では、ボビー・オロゴン、魔裟斗らを凌ぎ、須藤、KIDへの声援は異常な程大きいモノであった。
そんなヴォルテージの中、始まったピーター・アーツ×大山峻護戦はあっという間の秒殺決着で、意外にも会場は盛り上がらず。「あっ!アーツ、タップしちゃった」といった感じで、会場は戸惑い気味。少し怪しい雲行きのスタートとなった。
第2試合のジェロム・レ・バンナ×アラン・カラエフ戦は、1Rこそ大味なグラウンドの攻防となったが、2Rできっちりバンナが極め、なんとか会場も盛り返す。試合後、控え室から担架で運ばれるカラエフがなんとも無惨であった。
第3試合は問題の中尾芳広×ヒース・ヒーリング戦。試合開始前の両者が睨み合うシーンは、もう見慣れた風景。そこで、挑発の意味の中尾のキスにより、ヒーリングが怒り、パンチを放ったのだ。そのパンチはミッキー・ロークばりの猫パンチだったのだが、中尾がノビてしまった。これは、個人的見解だが、リングに上がし者、上がった瞬間から闘いは始まっているのではないか。臨戦態勢の相手に、睨み合ったりキスしたりするなら、ポーズではなく覚悟を持って行わなければ。刃は向き合ってなくとも、互いに腰に据えた刀に手は掛けてあるのだから。数試合経過後、マイクでヒーリングの反則負けが宣告されたが、どうも腑に落ちなかった。
そして、不穏な空気が流れる中、期待の永田克彦×レミギウス・モリカビュチス戦。試合前半は永田のテイクダウンが決まる度、盛り上がっていた会場だが、その後の展開が見えないのに気付くと徐々にトーンダウン。トイレに立つ人の姿も目立つ。「所詮アマチュア上がり」との声が聞こえてきそうだが、永田のポテンシャルにはやはり今後期待したいと感じた。
お祭りのはずが、お祭りの割にはというべきか、盛り上がりに欠ける中、レミー・ボンヤスキー×ザ・プレデター戦スタート。ZERO-ONE時代と変わらぬサービス精神で、入場時にチェーンを携えるプレデターになんとも好感を憶える。試合後の囲み会見でもチェーンを携えるあたりに、ハートをキャッチされてしまった。試合でも見事な負けっぷりで会場を沸かせてくれるのかと思いきや、全盛期のサップを思わせる猪突猛進ファイトで想定範囲外の善戦。スプリット・デシジョンでレミーの勝利が告げられた瞬間、会場にはブーイングさえ起こった。大会終了後の、谷川Pの総括でも「僕はプレデターでよかったんじゃないかなぁ」と。なんとも残尿感の残る結果となった。
ダルダル感の漂う空気を払拭してくれたのは、武蔵だった。試合後の「何かが起こると覚悟していて、構えてた部分もあった」との言葉通り、ボブ・サップの後頭部パンチによる5分間の中断。それを、3分間でいいとの武蔵の申し出に会場は沸く。再開後にダウンを取られるも、その後の怒声をあげながらの感情の籠もった猛打に会場がまた大いに沸いた。ただ、少し感じたのが、武蔵は昔から相手に背を向けるシーンをよく目にする。ルールに守られており、後頭部への打撃は反則なのは分かっているが、石井館長がいれば、叱咤したに違いない。
魔裟斗×大東旭戦は、テレビ放送の通り、魔裟斗の横綱相撲。魔裟斗の試合前のVTRや会見での発言からも王者の誇り、MAXを背負う責任感などプロ意識の高さを感じた。それは、武士道においての五味のスタンスに類似しているなと思った。開始直後に放ったローキックが、骨折あけの左足によるものであったことが、またそれを物語っていた。
セーム・シュルト×アーネスト・ホースト戦は、試合後の両者のコメントが気になった。シュルトの「ホーストはワンマッチだけでなく、今後、戦うこと自体を考え直した方がいいのではないか」と言い放ち、それを記者がホーストの会見時に伝えると「続けるかどうかはシュルトではなく、私が決めることだ。今回は負けたと思っていない。たまたまヒザをもらって、ケガになってしまい終わっただけ。シュルトが何かを言うべきではない」と。ミルコとシカティックが如く、同郷同士の確執なのか、なんとも険悪な雰囲気を感じてしまった。確執ではなく、いいライバル心に転化すればいいのだが。
この試合後、休憩。休憩明けに矢沢永吉氏が登場。会場には、おおよそ格闘技会場では目にしない矢沢信者と思しき人達が沢山いた。試合中も、試合を観るでもなく、通路やトイレで何度も目にした。リングインの際は、ライヴでお決まりの掛け声なのか声を荒げ、一般客の心中は定かではないが、会場は暖かく迎え入れていた。お祭りムードにも一層、拍車がかかった。
そして更に、ボビー・オロゴンの入場で会場のヴォルテージはマックスに達する。二選手の一挙手一投足に、観客も一喜一憂する。それだけに、マウントを取り動かない曙に野次が飛ぶが、それもまたヒートアップの証拠。色物と言われ、他の試合とは色合いは違えど、会場を盛り上げると言うベクトルに関しては同方向。誰かが言っていたが、曙が負けるのを見て、大晦日を感じると。曙(夜明け方)から、年が明け正月を迎える。これもまた、格闘技界の大晦日の風情となるのだろうか。
そして、セミのホイス・グレイシー×所英男戦は今回の私的ベストバウト。所は試合後、反省しきりだったが、難攻不落のホイス相手にいつもと変わらぬ目まぐるしい攻防を繰り広げ、コアなファンならずとも興奮を憶えたはず。所の勢いはstayどころか、更にstand out、これからの躍進にまた大きく心が膨らんだ。逆に、巧さを感じるも、ホイス時代は終演を迎えつつあるのではないか。打倒グレイシーを掲げてきた日本格闘界は、既にグレイシーを美味しい餌とまで思えるようになっている。そして、ヒクソンやヘンゾ兄弟の世代はもう"済み"で、ホジャーら次世代グレイシーのこそ"未"で倒すべき相手だと感じた。
そして、大トリは須藤×KID戦。キッチリ極めて、気持ちよく年を越させて欲しいとの念が、両選手、そしてレフェリーにまで伝達したのか。少しストップが早いのではないかとの声もあったが、須藤の目が一瞬飛んでいたようにも見えるし、妥当なレフェリングではないだろうか。HERO'Sスーパーヴァイザー:前田日明氏に、「仲間内での練習環境を変えろ」と助言されたKIDと、「相手のバランスが崩れるのを待つ"釣り"戦法も行き過ぎるといかがなものか」と苦言を呈された須藤。そんな両選手とも、この大舞台で最高のパフォーマンスを見せ、観客も前田氏も満足だったのでないだろうか。前日の会見で「前回の2試合(ホイラー戦・宇野戦)が自分にとっての決勝だと思っているので、今回は簡単にベルトが巻けると思う」との挑発めいた発言をしていたKIDも、試合後に須藤に駆け寄り「よくやった」と勝者の余裕か、労いの言葉を掛けていたのもまた、KIDらしい「試合後はノーサイド」の心地よい光景だった。須藤が試合後「悔しさを受け入れて、次へ。ここでしゃがんで、ジャンプするように」と言っていたが、助走が長い方が高く飛べると信じたいし、そう願いたい。7月・9月と続いたミドル級トーナメントを締めくくる意味でも、一年を締めくくる意味でも素晴らしい二人の闘いであった。
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総合格闘技向上委員会ver.18.0 終わりし伝説と生き長らえし伝説 ~051023_PRIDE.30~ |
marc_nas 2005.11.06 |
20005年10月23日にさいたまスーパーアリーナにて開催されたPRIDE.30をスカパー!にてTV観戦致しました。格信犯ブログ用に執筆した短い駄文ではあるのですが、せっかくなのでこちらに掲載させて頂きます。各試合についての、ショートコメントですので、いつもより読みやすいかと思います。試合結果と共にどうぞ。
第1試合 ヘビー級
●戦闘竜(アメリカ/チーム・ファイティング・ドラゴン/114.0kg)
○ズール(ブラジル/B-TOUGH/184.0kg)
1R 1'31" TKO (レフェリーストップ:四点ポジションからの頭部への膝蹴り)
●戦闘竜(アメリカ/チーム・ファイティング・ドラゴン/114.0kg)
○ズール(ブラジル/B-TOUGH/184.0kg)
1R 1'31" TKO (レフェリーストップ:四点ポジションからの頭部への膝蹴り)
スールのキャラクターに人気者になり得る可能性を感じる。
しかし、ミスジャッジ気味のレフェリングの戦闘竜に同情票。
しかし、ミスジャッジ気味のレフェリングの戦闘竜に同情票。
第2試合 ミドル級
○ムリーロ・ニンジャ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー/92.7kg)
●ムラッド・チュンカイエフ(チェチェン共和国/ゴールデン・グローリー/92.2kg)
1R 3'31" ヒールホールド
○ムリーロ・ニンジャ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー/92.7kg)
●ムラッド・チュンカイエフ(チェチェン共和国/ゴールデン・グローリー/92.2kg)
1R 3'31" ヒールホールド
チェチェン共和国出身というチュンカイエフに高いポテンシャルを感じる。
フィニッシュの足関節には興奮を憶える。
フィニッシュの足関節には興奮を憶える。
第3試合 ヘビー級
○ジェームス・トンプソン(イギリス/チーム・トロージャン/124.0kg)
●アレクサンドル・ルング(ルーマニア/リバティー柔道クラブ/175.0kg)
1R 2'13" KO (スタンドパンチ連打)
○ジェームス・トンプソン(イギリス/チーム・トロージャン/124.0kg)
●アレクサンドル・ルング(ルーマニア/リバティー柔道クラブ/175.0kg)
1R 2'13" KO (スタンドパンチ連打)
ルング、リングに上がる資格なし。
トンプソンは剛力、チェ・ムベなき今、強さ以外で人気を博する可能性大。
トンプソンは剛力、チェ・ムベなき今、強さ以外で人気を博する可能性大。
第4試合 ミドル級
●横井宏考(日本/チーム・アライアンス/92.9kg)
○クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン(アメリカ/ゴッズ・ストリート・ソルジャー/92.9kg)
1R 4'05" KO (サッカーボールキック)
●横井宏考(日本/チーム・アライアンス/92.9kg)
○クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン(アメリカ/ゴッズ・ストリート・ソルジャー/92.9kg)
1R 4'05" KO (サッカーボールキック)
悔しいが、横井と世界トップレベルとの差を感じる。
第5試合 ヘビー級
○セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ロシアン・トップチーム/108.8kg)
●ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル/チーム・クロコップ/105.0kg)
判定2-1 (小林=ハリトーノフ/ハミルトン=ヴェウドゥム/大橋=ハリトーノフ)
○セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ロシアン・トップチーム/108.8kg)
●ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル/チーム・クロコップ/105.0kg)
判定2-1 (小林=ハリトーノフ/ハミルトン=ヴェウドゥム/大橋=ハリトーノフ)
裏メインとも言われ、期待大だっただけに、噛み合わない内容に落胆。
ヒョードルへの挑戦権を賭けた互いに勝利至上の試合だが、
他人の土俵に踏み込むプロフェッショナルスピリットも必要ではないのか。
しかし、最も必要なのはドロー裁定という選択肢
こんな試合に判定は無用!
ヒョードルへの挑戦権を賭けた互いに勝利至上の試合だが、
他人の土俵に踏み込むプロフェッショナルスピリットも必要ではないのか。
しかし、最も必要なのはドロー裁定という選択肢
こんな試合に判定は無用!
第6試合 ミドル級
○瀧本誠(日本/吉田道場/81.0kg)
●ユン・ドンシク(韓国/フリー/90.8kg)
判定3-0 (三宅=瀧本/大橋=瀧本/小林=瀧本)
○瀧本誠(日本/吉田道場/81.0kg)
●ユン・ドンシク(韓国/フリー/90.8kg)
判定3-0 (三宅=瀧本/大橋=瀧本/小林=瀧本)
両者共に試合後半ガス欠。
走り込みを含め、もっと準備期間が必要なのでは。
走り込みを含め、もっと準備期間が必要なのでは。
第7試合 ミドル級
○桜庭和志(日本/高田道場/92.4kg)
●ケン・シャムロック(アメリカ/ライオンズ・デン/92.6kg)
1R 2'27" KO (右ストレート)
○桜庭和志(日本/高田道場/92.4kg)
●ケン・シャムロック(アメリカ/ライオンズ・デン/92.6kg)
1R 2'27" KO (右ストレート)
オープニングVTRで既に涙。
シャムロック兄には少し同情するが、素直に喜びたい。
終わりし伝説と、辛うじて生き長らえる伝説と言ったところか。
シャムロック兄には少し同情するが、素直に喜びたい。
終わりし伝説と、辛うじて生き長らえる伝説と言ったところか。
第8試合 ヘビー級
○ミルコ・クロコップ(クロアチア/チーム・クロコップ/102.0kg)
●ジョシュ・バーネット(アメリカ/新日本プロレス/125.0kg)
判定3-0 (三宅=ミルコ/足立=ミルコ/小林=ミルコ)
○ミルコ・クロコップ(クロアチア/チーム・クロコップ/102.0kg)
●ジョシュ・バーネット(アメリカ/新日本プロレス/125.0kg)
判定3-0 (三宅=ミルコ/足立=ミルコ/小林=ミルコ)
ジョシュのたるんだ腹に試合のブランクを感じつつも、やはり期待。
健闘するが、万全の体調での試合を観たかった。
ミルコよ、勝利の後に、何が見えた?
ノゲイラ?ヒョードル?それとも?
健闘するが、万全の体調での試合を観たかった。
ミルコよ、勝利の後に、何が見えた?
ノゲイラ?ヒョードル?それとも?